No.227
2007.3.25
 

報告する勇気

ビジネス上の基本動作は10箇ある。
1つは あいさつ・返事
2つは 朝礼・終礼
3つは 電話
4つは 指示命令
5つは 報告・連絡・相談、打ち合わせ
6つは 会議
7つは 問題点解決
8つは 整理・整頓・清掃(3S)
9つは クレーム処理
10番目は 確認

この中で基本動作の中の基本動作と言われているものは5つめの「報告・連絡・相談、打ち合わせ」(俗に言うホーレンソーダ)である。実はこれが最も難しい。人間の心理として良い報告は率先してやるが、悪い報告は出来るだけ隠したい。
自分自身(又は企業)を守ろうとする保身が問題を大きくする。人の命を次々に奪うこともある。リコール隠し、湯沸し器の事故隠しなど数えあげればキリがない。特に最近の電力業界のトラブル隠しやデータ改ざんは目を覆うばかりだ。3月20日の読売新聞の「編集手帖」の中に面白い文言があった。原発の安全性に関して「現場は事故に驚け。驚いたら上に報告せよ。上は報告を受けたら公表せよ。この基本中の基本動作を骨身に徹して学べ」と。安全が至上命題である電力業界にあっては当たり前のことであろう。しかし言うは易く行うは難し。当たり前のことを実行するには真の勇気がいる。

幹部に訴える(171)
部下指導(77)
〔面接技法―コーチングの実践(34)〕

最近、不二家の不祥事などで、安全や品質上のトラブルに食品メーカーも、消費者も過敏に反応するようになった。不二家はアメリカの衛生管理手法のAIBを導入し安全宣言を出した。ようやく再出発までこぎつけたが、そのツケは大きい。直接的には売上・利益に影響が出ているが、長年かかって築き上げた信用面、ブランド面での回復は困難を極めるだろう。
今回の教訓は同族経営の弊害もあるが、現場幹部のだらしなさ(管理能力の低さ)にも問題があったと言えよう。生産や品質管理の仕組みをつくったところでそれを動かすのは所詮人間である。その人間がいい加減であればせっかくのシステムも「あって無きが如し」。従って現場には必ず長と名のつく責任者が存在する。彼の大事な仕事の一つは、品質の安定したよい製品をつくり、消費者に喜んで頂くため、きめられたシステムを作業者に守らせることである。現場長の品質・コスト・納期・安全に対する責任感は絶対である。品質管理部門はあくまでも間接管理だ。品質をつくり出すのは現場である。その現場の直接の担当者(作業者も幹部も)がいい加減ではよい製品がつくれる筈がない。しかし現実的には、経営トップの思いと現場の考え方の間には大きなGAPが生じている。ここが怖いところだが、その根本は大人になり切れていない幹部の意識レベルの低さにある。

先日、ある食品メーカーでこんなことがあった。作業者が一つの工程を抜いて製品をつくってしまったのだ。その工程は絶対無くてはならないほどのことではないが品質のバラツキを小さくするために有効な工程である。もちろん「QC工程(図)」にはきちんと定められている。しかし少々面倒くさいのだ。そこで生産に追われていることを言い訳にして抜いてしまったらしい。実はここからが問題。彼の直属の長(仮にAマネージャーとする)はそのことを知っていながら何も注意せずそのまま放置していたことが後で分ったのである。「まあいいか」と妥協していたのである。本来なら「一体ナゼそんなことをするのか!」と叱りつけ、決めたとおりやらせる(命令する)のが長の仕事なのだが―。
彼のレベルでは日常的に部下に対するコーチングもティーチングも出来ないだろう。

その数日後、今度は製品の営業車への積み込み時に問題が起こった。翌日納品の製品は前日の夕方に営業車に積み込んでよいことになっている。但し明日が休日の場合は、品質保持上冷蔵庫で一時保管し、配送当日の朝積み込むことになっていた。
ところが、あるベテラン営業マンが明日は休日であるにもかかわらず、ひそかに自分の営業車に製品を積み込んでいた。多分、当日の朝に積み込むのが面倒だと思ったのだろう。しかし品質管理上は問題である。営業マネージャー(Bマネージャーとする)は、その15歳も年上の部下に厳しく注意した。「決めたことはきちんと守って下さい!」と。命令である。営業マンが早速製品を冷蔵庫に戻したのは言うまでもない。もしこの行為が入社したての営業マンであればコーチング的に「ナゼ、今日積み込んではまずいのかな?」と質問しながら考えさせる方法もある。しかし今回の場合はそうではない。前述の生産現場の事例も含めて、完全に規律の乱れである。

「マアいいか」と一つを許せばなし崩し的に悪習が広がっていく。そして現場全体がマヒする。そこにBマネージャーのように歯止めをかける。これが長の仕事である。

以上

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