No.221
2006.9.25
 

〔三度の飯よりミーティング〕


「三度の飯よりミーティング」を合言葉にしている事業体がある。
北海道は襟裳岬の近くにある「べてるの家」の共同作業所だ。哲学者・鷲田清一著「<弱さ>のちから」(講談社)の中で紹介されている。
<べてるの家>
「べてるの家」とは精神障害体験者やアルコール依存症の人たちがともに暮らすグループホームと共同作業所である。共同作業所では昆布の産地直送や紙おむつなど介護用品の宅配、店舗清掃やメンテナンス、病院の給食関係業務を主としてやっている。
そこでは朝起きられない、約束を守れない、気分は変わりやすく根気の続かない人たちが多勢いる。しかしこうした能率の悪い不採算の人たちを大事にしている。

<治さない医者>
「べてるの家」には「治さない医者」を自認する医者もいるとか。人間は生きていく上でいろんな苦労がある。どの苦労を選ぶか、どんな苦労を選びたいかをメンバーに問いかける。苦労を避けて通るとか、回避するのではなくどっちに転んでも人間は苦労する。苦労は生きている人みんなにある。「治る」というのは生きていく上で別の苦労に戻ることでしかない。だから病気を治すとか克服するということではなく苦労を認めてどの苦労を選ぶかを考えさせるのだと言う。

<コミュニケーションを最重視>
その代わりコミュニケーションを最重視している。例えば、体調の悪い者はいつでもバトンタッチ出来るよう日頃から自らの体調を仲間に伝え代役を確保しておく。
毎朝のミーティングで自分の限界を知っている人が自らの体調を報告し、今日の勤務可能時間を伝える。自分の脆さをきちんと伝える。こうしてメンバーの協力体制を作り上げる。仕事にアナをあけてはいけない。だから「三度の飯よりミーティング」。話し合いを何よりも大切にしている。
一方でメンバーが間違って(ケンカなどして)壁に孔をあけたりしたら、何の小言もない代わりに修理代金をしっかりとられる。即ち責任はとらされるわけだ。「変に甘く無条件で受け入れているわけではない」。

<べてるの家から学ぶこと>
「べてるの家」に限らず、営利を追求する我々の企業でも組織運営上コミュニケーションは欠かすことが出来ない。しかしどうしたわけか、業績が悪くなるに従ってコミュニケーションの場が少なくなる傾向があり、業績が上向くと活発になるようだ。この関係は本来逆であるべきだが、そうはなっていない。昔は縦(上意下達、下意上達)、横(部門間連絡)などのコミュニケーションが活発であったが、今はサッパリという企業は多い。コミュニケーションまで手が回らない?というのが現実のようだ。やはりトップが旗をふらなければ何も前進しない。
業種・業績が違うとはいえ「べてるの家」のやり方は非常に参考になる。
@ お互い弱い者同志だ。だから「チーム力」で補っていこう。そのためには「三度の飯よりミーティング」だ。
A 苦労は生きる人みんなにある。そこから逃げることが出来てもまた別の苦労を背負うことになる。ならば「どういう苦労をあなたは選択するか」を問いかける。
B 自分が組織(施設)に損失を与えた場合、とがめられはしないが、その責任は自分にある。従って責任は全て自分がとる。
実に明解である。
一人一人の力は弱いが、個々の責任とチームワーク力で補っていくのだ。

<メール依存症の弊害>
一般企業では最近就業形態が多様化し、パート・アルバイト・契約社員などの短時間労働者が増えている。そこに引継ぎというやっかいな問題が起こる。正社員ばかりの時代は、その必要性はなかったが、引継ぎが不十分なため様々なトラブルが発生している。きちんとしたところでは「引継ぎノート」などを設け徹底させている。
また、次々と入社してくる中途採用の新入社員にきちんと教育せず(コミュニケーションをとらず)、大クレームを発生させてしまうこともある。
最近はメールが当たり前になり、頻繁に行われているが、せっかくのメールもタイミングがある。よく聞いてみると今日1日開いていなかったとか、もう2日間もみていないとか言ってくる。何の為のメールかと思う。

<情報は利益なり>
M社の専務がある会議で「お互いの持っている情報をきちんと出し合うだけでかなりの利益が出る」と断言していたのが印象的だ。情報の公開と共有化と言われて久しいが、その「情報」とは「利益」そのものであると考えれば、コミュニケーションの欠落は利益の損失に他ならない。メールも良いがやはりお互い顔の見える情報共有化の場が必要だろう。
業績のよい企業ほどミーティング回数の多いことを見ても分かる。業績とミーティング回数は比例する。問題が発生すれば即ミーティング(決して先へ送らない)。今日、明日の予定についてのミーティング、そして一つ一つ問題を片付けていく。面倒くさがっては何ら前進しない。
A社では2ヶ月1回の開発会議を毎週1回に切り替えた。するとどうだろう。新しい情報がどんどん提供され、よりよい商品開発につながっている。B社では毎月1回の営業会議を毎週1回にした。C社ではイベント前のミーティングを従来の1〜2回から3日をあけず(実質6回)実施したところ、大きな成果を上げた。これらは全てトップの指示の下に行われたものである。
このように時としてトップの強力なリーダーシップが必要である。でなければ今の厳しい時代を勝ち抜くことは出来ない。衰退あるのみである。
まさに「三度の飯よりミーティング」である。

以上

HOME BACK