No.215
2006.3.25
 

〔お役所仕事とCS(顧客満足)〕


先日、政府の外郭団体の一つである「○○協会」なるところへ相談ごとがあって訪問した。午後3時30分頃である。
気難しそうな年配の男性が受付で頑張っている。来意を告げると「今日は5時までです。既に大勢の方がいらっしゃって、今はお断りしています。まだこんなにたくさんの方がお客様がお待ちになっています」と言って受付簿を見せてくれる。なるほど名簿にはズラーっと名前が並んでいる。彼の後ろの席には企業関係者らしき面々が雑誌を広げたり、腕組みをしたりで順番待ちをしている。
「何とかなりませんか?」
「いやー、今日はもうムリです。何人もすでにお断りして帰って頂いておりますので」
頑としてきかない。ここで引き下がってはならじと更にしつこく交渉を続ける。
「どうしても今日はダメですか?」
「えー、ダメです。明日来てください」
「明日は祭日ですがそれでもいいでしょうか?」
「あーっ!それはダメですね。あさってにして下さい」
しばらく押し問答を続けた。するとついに折れたか「ではこの受付名簿にお名前だけでも書いておいてください。ただ、ご相談に応じられるかどうかは分かりませんよ」
とりあえずパイプ椅子に座り込んで待つことにした。

ところが意外なことにスイスイと進んでいくではないか。待つこと約1時間。4時30分頃には待ち人はすっかりいなくなり、あっという間に順番が回ってきた。周りを見回すと数人の指導員らしき人々は既に暇をもてあましている。お茶を飲む者、机上を整理し出す者…。アレレ…。
小生の相談は2〜3点の確認のみで僅か10分で終了。5時にはまだゆとりがある。一体先程の受付担当者の言葉は何だったのか。5時前までに余裕を持って全てを終了させ職員を帰すことが目的であったのか。
しかし役所(外郭団体も同じ)からみれば、我々はありがたいお客様の筈である。わざわざお越しいただいたお客様を追い返すようなことを一般企業はするだろうか。「交通費と時間をかけてまた明日、あさってきて欲しい」の考え方である。責任者が1〜2名残ってふんばれば出来ることである。
帰りがけ、また受付の男性と一人の女性(来訪者)がもめていた。
「書類だけでも頂きたいと思ってきたのですが−」
「いや、そういうことはしていません」
「先程お電話したときはいいですよと言われたので来たのですが」
「誰が電話に出ましたか、名前はわかりますか?」
「いえ、それは−」
「それじゃあダメですね」
(ちょっと周りに声をかけるだけですむものを)
ちょうど職員がお帰りになる5時であった。(役所の全てがこうではないにしても、お役所仕事の一端を垣間見る思いがした)。

幹部に訴える(161)
部下指導(67)
〔面接技法―コーチングの実践(24)〕

コーチングは質問の技術でもある。質問をしながら相手の潜在能力を引き出し高めていく。「人が成長していくためには自分より優れた人と対話するのが一番早い」とも言われるが、企業においても家庭においても同じことだ。対話=コミュニケーション=日常普段の報・連・相である。優れた上司(両親)との報・連・相を通して部下(子供)は成長していく。このとき上司(両親)は時々質問を発しながら物事に対する価値判断基準を知らず知らずのうちに教えている。

話は少し外れるが、一般に会話をリードしている人を見ていると、結局質問のうまさにあることが分かる。相手がどんどん話したくなるような質問をしている。逆に最悪の問題は、ハンカチで顔を覆い、嘆き悲しんでいる遺族に「今のお気持ちは?」と言ってマイクをつきつけるマスコミである。これほど無礼で残酷な質問はあるまい。遺族の本音は多分「分かり切ったことを聞かないでくれ!失礼な!」であろう。

ところで質問は相手に対するものだけではない。自己に対する質問もある。+思考、−思考とよく言われるが、+思考の人間は絶えず自分に前向きな質問をしている。例えば−の状況(事態)に陥った時、「自分はここから何を学ぶべきか」「この経験をどう活かすか」と自問自答し将来に活かそうとする。逆に−思考の人間は「ナゼこんなことになるのだ!」「ナゼ自分がこんな目にあわなければならないのか!」と質問を繰り返し、責任転嫁に傾いていく。+であれ−であれ、人間は絶えず自己と会話しているのである。

さて、話は元に戻るがビジネスにおける上司の質問は部下の思考力を鍛える!質問に対し自分で考え自分の口で言わせるのである。部下の業務に問題が発生したとき、あるいは判断の必要性が生じた時、ややもすれば幹部はすぐ解決策を与えてしまいがちであるが、部下に自己解決策を促すのだ。それが質問である。

上司の発する代表的な質問は「どうすればいいと思う?」である。その他いろいろと質問の仕方がある。
@ 具体的に言うと?
A もう少し詳しく教えて下さい
B 例えばどんなふうに?
C どうしてかな、きみの考えを教えて
D その目的はなんだったっけ?
E 問題の本質(根本)は何だと思う?
F その中で最も大事な事はどれかな

先日実施した当社のセミナーでこんなことがあった。
(設問)「今、自分の子供(小学生)が学校へ行こうとして玄関を一歩出たところ、雨が降っていた。あなたならどう言いますか?」
(回答)Aさん −「傘を持っていきなさい!」
Bさん −「何を持っていく?」
Cさん −「どうする?」

Aさんの言い方は完全に命令である。子供が考える余地は全く無い。毎日これが繰り返されれば考えることをしない完全な指示待ち族となるだろう。Bさんの場合は選択させるやり方である。少し考えるだろう。Cさんの場合は自由回答式質問である。子供にとって最も頭を使う場面である。この設問の場合は回答は分かっているようでも、子供の口から「傘を持っていく」と言わせるところがポイントである。部下指導はこれの応用編である。よい質問をする上司に恵まれた部下は幸せである。

 

以上

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