No.209
2005.9.24
 

実行力


当社主催の中堅幹部マネジメントスクールは、9月10日(土)、第16期の修了式を迎えた。
この16年間の修了生は数百名にのぼるが、各々が企業に帰って頑張っている。
今回の修了生の中には、上司に訴えて自ら進んで参加した者や、セミナー当日の日程が子供の入学式と重なり(PTA代表としてあいさつまで決まっていたが)悩みぬいた末入学式を断り、セミナー参加を決めた者など迫力のある人材ばかりであった。そのためか、修了に当っての各人の決意は実行力を取り上げた者が多かった。代表的なものを紹介すると―。

A君 ― 有限実行!
B君 ― 今やれ!今日やれ!
C君 ― いつやるの!(本気を出して今すぐやる)
D君 ― やれば出来る!
E君 ― 前へ!
F君 ― 困難なものに(あえて)挑戦!
G君 ― 事前準備100%で行動!
H君 ― 常にプラス思考で行動


彼等が自分のこの言葉をしっかり心に刻み、現場で益々活躍されんことを祈るばかりである。
尚、来年4月から(9月まで)第17期がスタートする。大勢のご参加に期待する。

幹部に訴える(156)
部下指導(62)
〔面接技法―コーチングの実践(19)〕

 

今月は、先月号で紹介した、ある工場長の面接のやり方を考察してみよう。相手は入社1年目のA子さん(50歳)。元々性格は明るい方だが、最近元気がない。何か悩んでいるようだ。心配になった工場長は彼女と面接することになった。
まず工場長は「もう入社して1年になるけど、仕事の方はどうですか?」と聞いている。実はこの切り出し方はコーチング技術から言えばまずい。一般的にこういった形の質問をしがちだが、上司側にとっては質問し易い質問であるが、部下からみれば答えにくい質問である。どう答えるべきか、下手な答え方をしては誤解されかねない―という心理が働く。そこで当り障りのない返事をすることになる。
「何とかやってます」とか「特に(問題は)ありません」あるいは「まあまあです…」などである。その場をごまかそうとする。本人の真意ではない。質問の仕方がまずいからである。工場長は何気無く切り出したつもりでも、「どうですか?」という質問は相手に意見(考え)を求めているのである。
とっさに「何か意見はないか」「そのことについてあなたの考えているところを述べよ」と言われたようなもので、一瞬たじろいだに違いない。しかし、工場長も「うっと」つまってしまった。会話が進まない。

コーチングの場合、相手が答えやすい質問から入るのが原則であった。そこで工場長はどうしたか。たまたま稼動していない機械を目にしたので、指差しながら「あの機械はA子さんの担当ですか?」と聞いている。この言葉が全ての突破口となった。二人が共通して目にしたモノ(機械)についての具体的(事実についての)質問である。ここで初めてA子さんは「いいえ、あれはB子さんが担当します」と具体的に答えている。事実を答えているわけである。彼女にとって、工場長の「あの機械は…」の質問は答えやすい質問であり、何ら抵抗なく答えられる。
その後工場長は「A子さんの担当ではないんですか?」と確認の質問をしている。ここから二人の会話はどんどん展開していき、ついに彼女の心の奥底に潜む悩みを引き出している。

この事例からも分るように、コーチングで大事な事は具体的事実の質問から入るのである。
次に工場長は、相手の発言を繰り返し、反復復唱している。A子さんの「私が担当すると時間がかかるんです」に対し「あなたが担当すると時間がかかるんですか?」と応じている。またA子さんが「…みんなに迷惑かけるんです」と答えたのに対し「みんなに迷惑かける…」とオウム返しのように応えている。これもコーチングの原則であった。
そしてついに「(私は)みんなの足手まといになっているんじゃあないかと思うんです」という本音を引き出している。最後に工場長は、彼女の普段の仕事振りの良い点を認め、さらに会社にとって重要な存在であることを明確にしている。
こうしてほとんど退職の意志の固かったA子さんの心はほぐれ、新しい出発点に立つことが出来た。この事例は、コーチングというよりカウンセリングに近いが、工場長の一貫した理解的態度がA子さんを救った事例である。

以上

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