No.187
2003.11.25

今月の言葉


〔信じられないようなお話〕

 前月号で、中小企業の今夏の賞与は1/3強の企業が支給ゼロ!というショッキングな調査結果を紹介したが、それ以上に驚いたのが東京都の「退職時の名誉昇給制度」だ。

 朝日新聞によると、東京都の練馬区では「職員の退職時に基本給を引き上げて退職金を増額する名誉昇給制度を見直すことになった」とある。
まだこんな優遇制度があったのかというオドロキと怒りを覚える。税金でまかなわれている給与や退職金がこんな形で増額されているとは―。

 収入(税収)が少なければ賞与をカットし、給与を減額あるいはリストラするのが当たり前である筈なのに、この考え方が通用しない世界。今ようやく見直すという。何をか言わんやである。ひどいのは、汚職に相当する事件を引き起こしながら名誉昇給させて104万円もの退職金を上乗せさせて退職した幹部もいるという。もうアホらしくて話しにならん―。これは東京都に限らないだろう。改革、改革というが国も地方もまず隗より始めよ―である。


― 幹部に訴える(137)
―部下指導(43)─
[面接技法―カウンセリング]

 
 先月号で、ある小売業の副社長と店長の父親とのやりとりを紹介した(No.185)。あらためて二人のやりとりを振り返ってみよう。
 この中で、副社長は決して父親を説得しようとする意図的な行為をとっていない点に注目したい。普通に考えれば、自社の社員(店長)の父親が会社に怒鳴り込んで来たわけであるから、当然会社側としては厳しく対処しようと構える。そしてお互いの激しい口論の末、ケンカ別れになったかも知れない。現に、創業以来今日まで20数年間に亘って、その強烈な個性とリーダーシップで引っ張ってきた社長は「私なら、アタマからどなりつけていただろう。とてもこんな工合にはいかない」と述懐している。

 では、副社長の面接時の対応をひとつひとつ見てみよう。

 まず一つは、徹底的に聞き役に回っていることである。
 「相手(店長の父親)をねじふせてやろう」「この際企業の厳しさというものを教えてやろう」とする恣意的な態度はとっていない。人間は本来、話を聞くより話したがる。「口は一つに、耳は二つある」とは言うが、聞く(聞き続ける)ことは苦痛が伴う。だから"自分を守る立場""説教する立場""言う立場"に立ちがちである。前述の創業社長の考え方がこれである。

 しかし副社長はこの立場をとらなかった。むしろ相手にしゃべらせている。一連のやりとりの中で、二人が話した語数は父親が500語、副社長は220語であることをみても分かる。普通なら相手を説き伏せるため、この語数は逆になる。そして失敗する。

 二つ目は、あいづちのうまさだ。簡単な「あいづち」と「うなづき」は聞いてくれているという安心感と信頼感を相手に与える。「なるほど」「ふーむ」「いえいえ」など、会話の流れに逆らわず、タイミングよくあいづちを打っている。また「うなづき」は首を動かす動作だが、これも頻繁にやっていた。欧米人は大ゲサに両手を広げたり、目を見開いたりするが我々日本人はその必要なない。「あいづち」や「うなづき」は話を深める重要な技術だ。

 三つ目は「くり返し話法」を実にうまく使っている。

「父親」

 

「副社長」

「やったのは社員ですよ。
おかしいじゃあないですか」

「その方面に詳しい人にも相談
          したんですよ」

「…納得がいかないですからネ」



「会社のやり方がおかしいと―」


「専門家の方にもご相談されたんですね」

「ふーむ、納得がいかない…」

父親の言った言葉をほとんどそのまま繰り返している。その度に父親は「そうなんですよ」「そうなんですよ」と身を乗り出さんばかりである。

四つ目は、父親の感情を副社長が明確に表現したことである。「息子さんのことをお父さんは本当に心配されているんですネ」と。ここまできたとき父親は、自分の気持ちをこの副社長は理解してくれたと感じたのだろう。それまでの攻撃的態度は一変している。そして「どちらかというとあまり出来の良い息子ではありませんが…」となり、「息子が悩んでいるところをみるとつい……親バカですかね」となり、今日ここ(会社)へ来たことを反省している。

結局、この父親は副社長と話し合っているうちに自らの浅はかさを悟り自分で解答を見つけたわけである。まさに『答は相手が持っている』である。
今、A店長は降格はされたが、一兵卒として必死に頑張っている。A君の店長復帰に期待したい。

以  上

HOME BACK